日本の文化は面白く、様々な事象に意味がある。実は畳の敷き方にも意味があり日本文化の作法とも深い関係がある。ご存知「上座」「下座」の概念も、畳による座敷という建築様式の発達からなる。
冠婚葬祭で畳の敷き方を変える「祝儀敷き」「不祝儀敷き」、お坊さんが仏前に入場する際、位置は畳で特定する。
例えば茶道で茶碗を相手に差し出すために置く位置は畳表の凹凸を数えて位置を特定する。礼儀作法もお道具の寸法も、数寄屋建築の室内の内法寸法も、すべて手織の畳表の目はばの五分目の曲尺寸法が基準になっている。
これは千利休が打ち立てた「曲(かね)割りの法」という宇宙世界を理論的に寸法で割り切るようにしたことから出ているようだ。その基準になる始まりは畳縁のところからで、作法に則って「歩く」「座る」場合も同様。
伝統をまもり、うみだす
小学生時代、旧野﨑家住宅を見学に訪れたときに「畳の縁は踏むものではない」と今は亡き師に教えていただいた。昔の畳縁が丈夫でなかったこと、畳縁には家門が織り込まれていることなどの理由はもちろん、地元のものづくりへの敬意までもが感じられる言葉だと、今になって思う。
かつてひとつの会社で200人以上の工員が働いていたという児島唐琴地区。いわゆる畳縁通り。たくさんの社員寮に、託児所の跡地。当時の職人さんたちの息遣いが聞こえてくるようだ。
「TATAMI」とローマ字表記されるように畳は世界語になり、たくさんの効能も世界中で研究されている。繊維のまち児島では今、畳とともに歴史を築いてきた約20社の畳縁企業が互いに切磋琢磨し、畳縁生産全国シェア8割を占め、世界に誇る日本の文化をしっかりと守り伝えている。
取材協力:高田織物株式会社、松井織物株式会社