染
天然藍の誕生は紀元前2000年。古代エジプトが発祥と言われている世界一古い染料だ。日本の藍染めは蓼藍(たであい)という植物から採られる青色の染料で染めるが、一度に濃い藍色が染められるのではなく、何度も染めを繰り返すことによって、深さをだす。染めの段階でだすことのできる色あいの違いで数十色にもなる色名が生まれた。代表的なものを挙げると、色の浅い順に、瓶覗(かめのぞき)/水浅葱(みずあさぎ)/浅葱(あさぎ)/納戸(なんど)/縹(はなだ)/紺(こん)/褐色(かちいろ)などだ。
→日本の藍・青22色表
この色数の多様さからも、工程にかかる手間や藍染めの文化の深さがわかる。
ところで、英語では藍をナチュラルインディゴ、化学染料によるものをピュアインディゴという。1880年独科学者により藍と同一の化学式による化学染料インディゴが開発され、「藍色」の大量生産が可能となった。このため昔ながらの藍染めは世界各地で衰退の一途をたどる。藍は天然染料のため、どうしても不純物が混じる。その不純物がゆっくりと抜けていき本来の藍色が楽しめる。枷染めという技法で繊維の芯まで染まった藍は、色落ちしない。それに対し、合成インディゴの分子構造は藍よりも大きく繊維の周りに付着しているだけであるため、独特の色落ちがある。これがお馴染みのジーンズの「味」になる。
「藍」と「インディゴ」どちらにも良さがあり、どちらも日本でそして世界で愛されてきたブルーだ。児島では色落ちを楽しむ合成インディゴ染め、独特の深い青を楽しむ昔ながらの藍染め、そして両者を併用した製品まで、好みに応じた製品と出会うことができる。
織
デニムとは、縦に色糸、横に白糸を使った綾織りの生地だ。残念なことに、独立した機屋は数少なくなっている。そのため、自社テキスタイル会社をたちあげ、デニムに特化した開発をおこなっている企業も多い。洗濯やはきこみによる伸縮まで緻密に計算され、ヘビーオンスの分厚くずっしりとした生地から、ストレッチ製に優れたはきやすい生地、力織機で織り上げたザラつき感のある生地など様々な生地が今日も開発されている。それぞれのブランドの理想をかたちにするため、ジーンズの醍醐味である美しいエイジングをだすためには、生地の質がかなりのウェイトを占める。
パターン・裁断
洋服を選ぶとき、デザインと同様に気になるのがシルエット。気に入っていても着ないなという服は、着てみるとどこかしっくりこないのだ。それはほんの少し裾が長すぎたり、幅広だったり、着ているうちに伸びたような気がしてきたり、細かな感覚の問題。様々な体格の人がいて、様々な好みがあるのだから仕方がないといえば仕方がないのだが。
児島のパタンナーはジーンズのことを知り尽くし、美脚という永遠のテーマを追い続ける職人。しっかりとした芯づけや生地の特徴を知り尽くした綾目の配置などで、シルエットの崩れない美ラインデニムが仕上がる。あとは各ブランドとの相性の問題。実際にはいてみて、これ!となるブランドが必ずあるはずだ。
また、オリジナルジーンズのオーダーを扱っている企業もある。ジーンズは10年(ジーンズ好きは30年!)はくことのできる機能性抜群の衣服。自分だけの「パートナー」を1からつくりあげてみては。
縫製
児島ではヴィンテージジーンズ同様、綿糸を使って縫製している。ポリエステル糸では、エイジングの際、糸だけが奇麗なままで浮いたような印象になってしまうからだ。糸の種類も様々。○番手の極太糸にこだわるブランドもあれば、ヴィンテージデニムの鮮やかなオレンジを活かしたブランド、チェーンステッチではなくあえて手動でグルグルとステッチをかけるブランドなど、縫製は衣服の肝であるだけに、細かなところまで各々こだわりぬかれている。特に味のある仕上がりを求める需要が高いため、ユニオンスペシャルというヴィンテージジーンズを縫っていたミシン(稀少なため時価百万をこえるという!)で「ネジレ」「ヨジレ」を再現しているブランドもある。
ちなみに、破れたりほつれたりしたジーンズは、購入店で補修可能だ。ぜひ問い合わせてみてほしい。愛用された我が子との再会は、職人にとって何より嬉しいものなのだ。
加工
ジーンズの加工を世界で初めて行ったのは児島だ。この加工技術は世界でもずば抜けている。世界の名だたるビッグブランドのデニム加工はほとんどが児島で行われているという。
加工は大きく分けて①洗い②擦り③破き④装飾の4種類。①の洗い工程では形状の違うゴムボールや石、砂などと一緒に洗濯機で回す(自宅で行うとお母さんに土下座で謝ることになる)ことにより風合いのある、色落ちをだす。②の擦り工程では、皺ができて「ひげ」となった部位や、太ももの縦の色落ち、裾やポケットなどはきこむと擦り切れてくる「アタリ」を表現する。③はお馴染み、いわゆるダメージ加工のこと。個人で破り加工を行うというかたもいるが、職人がすると一味違う。裏布をあてて肌が見えないような加工や、トータルバランスの考えぬかれた加工は、一般ではなかなか難しい。④「デコる」という言葉ができたほど、自分らしさのあるスタイルが求められている時代。様々なペイントやラインストーン/レース/ファーによる装飾などもジーンズと好相性だ。